半年間の空室でも家賃を下げずに成約!閑散期こそ試される「空室解消力」
2023/07/27
現在の賃貸市場は入居者の動きが鈍い、いわゆる「閑散期」真っただ中。
この時期によく頂くご相談が『空室』です。
1~3月の繁忙期に空室を解消できず、
空室が長期化してしまうといったケースが大半です。
こうした場合、競合物件の状況によっては、家賃を下げて募集せざるを得ないこともあります。
当社では、可能な限り家賃を維持し、1日でも早く空室解消を実現するために、
入居者募集部門に豊富な人員を配置し、
独自のインセンティブ制度「ポイント会員制度」を設けるなど、多くの工夫をしています。
ただ、こうした仕組みだけで空室が早期に解消できるわけではありません。
普段から、賃貸仲介会社にまめに連絡をとったり、訪問したりすることで、
信頼関係が構築でき、閑散期であっても早期の空室解消を実現することができるのです。
今回のコラムでは、半年間の長期空室物件を前管理会社から引き継ぎ、
閑散期であっても家賃を下げることなく空室を解消できた事例をご紹介。
当社の「足を使った」空室解消の取り組みをお伝えします。
「他社に管理を任せている物件の空室が埋まらない。なんとかして欲しい」。
4月上旬、Aさんよりご相談がありました。
物件は東京23区内の賃貸併用住宅で、計3室のうち1部屋をAさんのご家族の住居として活用。
残りの2部屋を貸出しており、そのうちの1部屋がどうしても埋まらないとのことです。
ご相談の時点で、空室期間はもう半年間にも及んでいたのです。
また、募集にあたってAさんには2つのご要望がありました。
一つは入居者の条件を絞ること。
これはご家族もお住まいになっている賃貸併用住宅であることから、
身元のしっかりした人を入居者として入れて欲しいというものでした。
もう一つが賃料を下げないこと。
ご相談を受けたときには、すでに閑散期に入っており、
早期の空室解消を目指すのであれば、募集条件の見直しも手段の一つです。
また、前管理会社が設定した募集賃料は近隣相場と比較した際に、
頭一つ抜けている条件だったことも頭を悩ませる要因となりました。
こうしてAさんのお話だけを聞くと、
完全にご希望に沿うことは難しいのではないか、それが最初の感想でした。
まずは物件を詳しく調査して「物件の強み」を把握することから始めます。
その結果、この物件の魅力は主に三つあることが分かりました。
一つ目は、立地です。
最寄り駅まで徒歩3分、しかもそこから新宿・渋谷駅まで20分強という好立地。
賃貸需要には事欠きません。
二つ目は、広々としたロフトです。
通常は、高さ70~80cmほどのロフトが多い中で、
この物件は高さ約120cm、広さも14㎡、約8.5畳の空間を確保しており、
寝室としても快適に利用できる環境です。
三つ目は、綺麗で充実した室内・設備です。
とりわけ単身者の人気設備ランキングでも上位の独立洗面台・温水洗浄便座が付いています。
さらに築7年の新しい物件であったため、清潔感も申し分ありません。
次に、仲介会社を訪問し、類似物件の成約事例や市況の調査を行います。
その結果、やはり依頼された賃料は相場よりもやや高いことが分かりました。
また、賃貸仲介会社の担当者によれば、物件周辺には学生や若い社会人が多いとのこと。
専門サイトでエリア内の年代層を調べてみると、確かに20代の人口比率が高いようです。
たしかに賃料は相場よりも高いかもしれませんが、
広いロフトや充実した設備を考えれば、半年間も空室になるような物件ではありません。
現在の募集賃料でも空室は解消できると判断しました。
そこで成約事例をもとに、Aさんに募集賃料と
想定ターゲットを学生と若い社会人に設定することを伝えて、募集活動を開始します。
とはいえ元々は半年間も空室が埋まらなかった物件です。
ただ待っているだけでは埋まるはずもありません。
こういうときこそ「足を使った」物件の売り込みが威力を発揮します。
まずは物件の現地調査です。
できるだけ見栄えが良く見えるように、
ロフトや水回りの写真を撮影しながら、細かい周辺施設や住人の年齢層をリサーチします。
物件だけではなく、駅から物件までにどのような施設があるのか、
物件周辺の夜間の様子はどうか、騒音が出ているようなことはないのかなど
現場に徹することで、物件の良さを最大限に引き出すことができるのです。
そうした「生の」情報をもとに、仲介会社を訪問します。
通常の物件であれば5~6社ほどの仲介会社を訪問する程度ですが、
閑散期ということもあり、合計で20社近くの仲介会社を訪問。
仲介会社では担当者に撮影した写真を見せながら、具体的な入居者像を説明。
若い人向けに、ロフトのあるおしゃれな物件として案内してもらえるように交渉を重ねます。
担当者との交渉でも常に改善を重ね、足りない情報があれば
再度、物件の現地調査を行い、提案内容をブラッシュアップしていきました。
加えて、当社独自のインセンティブ制度である「ポイント会員制度」についても併せて説明し、
優先的に物件を紹介いただくメリットも提示します。
さらに、担当者との接点を増やし当社の物件を思い出してもらうため、
折を見ては連絡を取り、リマインドを行うことも欠かしません。
「オーナー様の期待に応えたい」という一心で、物件の現地調査や仲介会社への
訪問、連絡などできる限りのことをやり切りました。
そして最終的に、繁忙期でも半年間埋まらなかった物件を
1カ月半程度で成約させることに成功。
Aさんからは電話で
「ずっと埋まらなかった空室を埋めてくれてありがとう」と感謝の言葉をいただき、
今回募集した部屋だけでなく、もうひと部屋の管理も任せてもらうことができたのです。
もちろん、私たちもすべての物件で相場賃料よりも高く入居者を付けられるわけではありません。
相場賃料よりも高い賃料で募集をしている場合には、
まずは相場家賃に募集条件を揃えてから、募集活動を行うことをお勧めしています。
ただ、今回の物件のように、類似物件と比較して強みを有しているものや、
リノベーションを実施した物件、3点式ユニットバスを
バス・トイレ別にリニューアルした物件など、
競争力のある物件は相場家賃と比べても高い募集条件で募集を行っています。
そして、その物件の特徴が賃貸仲介会社の担当者にしっかり伝わり、
現場の募集活動に活かせるよう、情報配信や訪問活動を徹底しています。
入居時に設定した家賃は、入居者が退去するか、更新時に交渉する以外の方法では、
変更することはできません。
簡単に変えられない家賃だからこそ、早期の空室解消と収益力維持のバランスを取りながら、
最適な賃料設定を行い、早期の空室解消に尽力しています。
早期に空室を解消し、さらに収益力を維持し続けていけるよう、
これからも現場重視で募集活動に取り組んでいきたいと思います
日本財託管理サービス 管理受託部 N・S
◆ スタッフプロフィール ◆
奈良県橿原市出身の24歳。
管理受託部受託課に所属し、物件オーナー様に管理委託や収益改善のご提案を行っています。
最近は趣味のゴルフで、スコア100切りの壁に悩まされています。