賃貸管理でしばしば入居者から受ける連絡の一つが、

騒音に関するお困り相談です。
　
原因がすぐに特定できる案件もありますが、
その多くは、お部屋に実際に訪れて、
調べてみないと原因が分かりません。
　
騒音トラブルで難しいのは、
音の感じ方は人それぞれだということです。
　
大きい音だからといってトラブルになるわけではなく、　
騒音計で検知できないような小さな音量でも、
眠れないほど気に障るという人がいます。
　
それだけではなく、
『騒音が止まらないなら引っ越したい』とまで言うほど、
ストレスになることもあるのです。
　
その気持ちに真摯に寄り添いながら、
原因究明と解決に努めるのが、
私たち賃貸管理会社の役割です。
　
そこで今回のコラムでは、
小さな音から発生した
騒音トラブルの解決事例をご紹介します。
　
　
『夜中に甲高い音がカンカンと聞こえてきて、
眠れない！』
　
３０代の女性入居者からの相談でした。
　
電話口だけではどんな音なのか、
また原因も分かりません。
　
決まって夜中に発生するということで、
その頃を見計らって、部屋を訪れました。
　
入居者に許可を得て、
室内に入り、状況を伺っていると、
問題の音が聞こえてきました。
　
「カンカン...
カンカンカン...」
　
何か硬いもの同士がぶつかっているような音が
聞こえてきます。
　
大きな音量ではありません。
ただ、たしかに安眠を妨げそうな甲高い音です。
　
目を閉じて耳を澄ませたものの、
どこから騒音が発生しているのかまでは、
分かりませんでした。
　
まずは室内の設備をひとつひとつ
点検させてもらうことにしました。
　
ドアやサッシの立てつけ、
エアコンの室外機に給湯器。
　
そして浴室に入った時、
ピンとくるものがありました。
　
「もしかして...」
　
その部屋は、シャワーヘッドとホースが、
すべてステンレス製の高級感がある
ユニットバスでした。
　
調べてみると、分譲された時からの設備で、
他の部屋でも使われているようです。

「ちょっと試してみたいことがあるので、
あの音が聞こえるか聞いていてもらえますか」
　
入居者には居室内にいてもらい、
ユニットバスに入ります。
　
シャワーを浴びる際と同じイメージで、
シャワーヘッドを動かしてみました。
　
すると『カンカンカン』とユニットバスの浴槽に、
金属のホースがぶつかりました。
　
『これです！たぶんこれです！』
　
騒音の原因が、他の部屋から響いてきたシャワー使用中の
生活音であることはわかりました。
　
とはいえ、騒音を出している部屋を
特定するのは困難です。
　
外部からの騒音はほとんどの場合、
隣室や上下階の部屋から伝わってきます。
　
しかし、今回の音は水道の配管を伝わり、
離れた部屋からも
聞こえてきているようでした。
　
本人は騒音を出している
自覚もないはずです。
　
３０戸以上あるマンションですから、
生活リズムも人それぞれ。
　
深夜だからといって、
シャワーを使うなとも言えません。
　
そこで建物管理会社に許可を得て、
全戸に対して、当社名で手紙を投函しました。
　
騒音に困っている人がいる旨、
原因がおそらくシャワーホースであること、
　
そしてお願いとして、
使用時には音に配慮して欲しい旨を
伝えたのです。
　
手紙から１週間後、
入居者に連絡を取ると、
　
『まだ聞こえる時もありますが、
以前より相当よくなりました！ありがとうございます！』

様子を聞いてみると、
手紙の効果はあったようです。
　
　
この事例では、
騒音は部屋の外で発生していましたが、
部屋の中からの音でも原因が分からないこともあります。
　
４０代の女性入居者から
『深夜に謎の振動音を感じて眠れない。このままなら引っ越す』
との相談をいただいた事例です。
　
さっそく現場に急行して、事情を聞いてみると、
隣近所からの騒音ではなく、
自室のどこかで鳴っているような気がするというのです。

たしかにその部屋は最上階の角部屋で、
隣は空室でした。
　
室内の設備を調べ始めてしばらくすると、
入居者がふと、
　
『しっ！今、何か聞こえませんでしたか？』
　
口に人差し指を当て、まわりをうかがっています。
　
たしかに、低い音で「ブーン」と
床から響くような音がします。
　
居室内には一つ、犯人と思われるものが
ありました。
　
「これ、冷蔵庫の音じゃないですか？」
　
検証してみると、原因は一定時間ごとに発せられる
冷蔵庫の稼働音でした。
　
その低い音と振動が、フローリングを伝い、
睡眠を妨害していたのです。
　
　
ちょうどベッドも金属パイプ製で
振動音を伝えやすいものでした。
　
入居者は頻繁に料理をする人だったので、
備え付けのミニ冷蔵庫では容量が足りず、
自分で大きな冷蔵庫を購入していました。

冷蔵庫はキッチンの通路に置ききれずに、
居室内に設置していたのです。

原因は判明しましたが、
問題は解決していません。
　
どんな冷蔵庫に替えても、
同じ問題は起こります。
　
だからといって冷蔵庫のためだけに、
引っ越すこともできません。
　
そこで実施してもらったのは、
防振防音材の設置です。
　
入居者の代わりにホームセンターで
適切なものを見繕いました。
　
冷蔵庫の下に遮音マット、
そして、ベッドの脚に防振のゴムマットを置きました。
　
入居者の負担で、わずか数千円の出費ですが、
『気にならず、眠れるようになりました！』
と喜びの声をいただきました。
　
　
このように入居者自身に問題がある場合、
最後の対応は入居者任せにしてしまう
会社もあります。
　
騒音トラブルに対応するのは、
手間も時間もかかりますが、
　
当社では原因究明と事情説明から、
解決策のアイデア、実施まで取り組んでいます。
　
騒音の大小ではなく、
入居者にとって、どれだけ大きな問題なのか。

小さなお困りごとをおろそかにすれば、
いずれは大きなクレームにつながります。
　
その結果、解約となれば、
家賃収入は入らなくなってしまい、
オーナー様にとっての損失を生んでしまいます。
　
入居者にとって快適な住環境を提供することが、
オーナー様の利益につながります。

これからも入居者が長く、
そして、快適に暮らせる環境を提供していきたいと思います。
　
　
日本財託管理サービス　管理部管理課 土橋　正季（つちはしまさき）
　
　
◆　スタッフプロフィール　◆
　
和歌山県出身の４３歳
　
管理部に所属し、漏水や火災といった緊急時のトラブルをはじめ、
室内設備や騒音問題など入居者のお困り事の解決を行っています。
　
日本財託グループ野球部の監督として、
東京不動産健保組合の野球大会１部リーグで、
優勝を目指しチームを率いている。