14人が一斉に動き出す!初動対応力が決め手のアパート火災事故現場レポート
2017/09/07
『御社の管理する物件が火事になっています。
急いで全室の鍵を持ってきてください!』
今年の春先、消防署から突然の知らせに、
現場へと急行しました。
火災が発生したのは、都内に建つ
築20年が経過した4階建てのアパートでした。
オーナー様が他社でご購入された物件で、
当社が全戸の管理を承っています。
当時、アパートには20名以上の入居者様が
暮らしていました。
火元となった部屋のほか、
隣の部屋、そして向かいの部屋、さらには廊下など共用部まで
延焼する大きな火災です。
ひとたび火災事故が起これば、
同時並行して、消防や警察、保険会社、さらに近隣住民とやり取りし、
火災対応を行わなければなりません。
また、一日でも早く部屋を復旧し、
入居者が元通りに住める状態にしなければ、
家賃収入も途絶えてしまいます。
今回のコラムでは、火災事故への対応の現場レポートから、
火災リスクに対応するためのポイントをご紹介します。
駆けつけた現場は、すでに鎮火していたものの、
まだすす臭さが辺りに漂っていました。
2階の窓から3階にかけて、外壁はすすで真っ黒に汚れ、
激しい火災だったことがうかがえます。
アパートの入り口付近を取り囲んだ、
数十人の野次馬をかき分けて、消防、警察を探します。
賃貸管理会社であることを伝えて、
アパートの中を見せてもらいました。
火元になった2階の部屋に入ると
視界に入るのは黒一色の世界。
さらに共用部の廊下の天井は、
火の勢いで焼け落ちてしまっています。
ひと部屋ずつ延焼の具合を確認していきますが、
鍵のかかっている部屋もあり、
まだ室内に人がいるかもしれません。
警察立会いのもと、
安否確認が取れない部屋のドアの鍵を
ひとつひとつ開けていきます。
火災で取り残された入居者様はおらず、
幸いなことに1人の死亡者もなく済みました。
ただ、入居者様のお二人が火傷などで
入院治療を受けました。
火災事故に迅速に対応するには、
各方面の関係者に対して、
同時並行して働きかける必要があります。
そのため、火災の規模が大きければ大きいほど、
多くのスタッフが対応に動く必要があります。
火災発生当日は、
12名のスタッフが対応しました。
私を含め、現場では当社スタッフ3名が
現場検証への立会い、そして帰宅してきた入居者様に
仮住まい先のホテルをご案内をしました。
それと同時に社内では4名のスタッフが、
オーナー様への火災の状況報告と今後の対応策についてご報告、
そして、入居者様の仮住まいとなるホテルやマンスリーマンションの
手配を行いました。
さらに別の4名のスタッフは、
現地でコンタクトが取れなかった
入居者様に対して、電話で安否確認を行います。
状況が分からず困惑する入居者様一人ひとりに、
不安を解消できるよう、丁寧にご案内をしていきます。
「当社でホテルを手配しましたのでご安心ください。
状況が分かり次第、都度ご連絡差し上げます。」
入居者様のうち4名は、外国籍の方でしたので、
外国籍入居者対応を行うネイティブスピーカーの
スタッフ1名も、安否確認に加わりました。
火災で怪我をしている人がいないかを確認することは
もちろんですが、
後々の火災保険の手続きで、ご協力いただく可能性もあるため、
速やかに安否の確認と状況説明をする必要がありました。
また、オーナー様と入居者様、
それぞれが加入する火災保険の保険会社にも
ただちに連絡を入れました。
朝から夜まで各方面への対応と連絡に追われつつ、
帰社後も今後の火災対応についてミーティングを行い、
事故当日を終えました。
翌日も、引き続き安否確認が取れない
3名の入居者様に連絡を続けます。
なかには、携帯電話を持っていない方もいましたが、
すすで汚れた部屋の扉に手紙を差し挟むなどして、
何とか連絡を取ることに成功しました。
現地では、さらに詳細な現場検証が続きました。
また、近隣住民宅に1軒1軒、
説明と謝罪に訪問しました。
「ご迷惑をおかけしてすみません。
何か被害などありませんでしたか?」
アパートの近くに住んでいる方が、
火災発生時の様子を語ってくれました。
火がすぐ近くまで迫ってきて、
怖かったとおっしゃりつつも、最後には
『おたくも大変だねえ。よろしく頼みますよ。』
逆にねぎらいの言葉をかけてもらい、
しっかり対応しなければと、想いを新たにしました。
別の近隣住民宅に伺うと、口を開くなり、
『聞いたけど、人が死んだんだって?』
実際には、亡くなられた方はいないにも関わらず、
たったの1日で根も葉もない噂が広まっていたのです。
このような噂話をそのままにしてしまうと、
『火災死亡者が出たアパート』としてレッテルが張られ
次の入居者募集に影響する可能性があります。
死亡者は一人もいないという
事実を説明し誤解を解きました。
周辺の方々を訪問するのは、
火災被害による保険申請についてご説明することも目的です。
今回の近隣住民の訪問で、隣のマンションのバルコニーが
延焼で破損していたことが分かりました。
このような場合、
被害にあわれたマンションの管理組合か建物の所有者が
加入する火災保険で対応してもらうことになります。
さっそく申請に必要な資料を共有する旨を、
建物管理会社にお伝えしました。
また、入居者様がお部屋に戻れるよう、
何よりも急ぐのは、ライフラインの復旧です。
火災の翌日には電気工事会社と現場で打ち合わせを行い、
さらに、内装施工会社、共用部の工事会社も続々と現場入りし、
復旧へのプランを整えていきました。
加えて、火災で鉄骨の強度が弱まっていないか、
検査を入れ、問題がないことを確認し、
復旧工事をスタートさせました。
協力会社の尽力もあり、
事故後1週間で電気は復旧。
ホテル住まいだった入居者様は
帰宅してもらえるようになったのです。
ただ、被害が激しかった2階の入居者様には、
2か月後の6月末まで仮住まいで
過ごしていただくことになりました。
すべての工事が完了したのは、7月末です。
真っ黒に焼けた廊下や室内は、
何事もなかったかのように、元通り復旧できました。
≪室内および共用部の火災からの復旧写真はこちら≫
http://www.nihonzaitaku.co.jp/bs/object/pdf/before_after_20170907.pdf
この火災事故に関わる費用は、
内装および共用部の復旧、電気工事、
現場での緊急対応や仮住まいのホテル代など、
多くの項目に及びます。
円滑に保険金が受けられるよう、
申請書類を整えるお手伝いも、当社で行っています。
このように一度起こると、解決までに大きな手間や
時間を要するのが火災事故です。
オーナーとして、このリスクに備えるには、
どうすれば良いのでしょうか。
大前提として、被害額が大きくなる可能性を考えれば、
火災保険に加入しておくことは必須です。
その上で、万が一の事態にも、
対応力がある管理会社をパートナーに選ぶことです。
火災対応は初動対応が重要になりますし、
同時並行でさまざまな利害関係者と
連絡、調整、交渉などを行う必要があります。
初期段階でスピーディーに対応できなければ、
入居者は退去し、家賃収入も止まってしまいます。
家賃収入が止まったとしても、
ローンの支払いは待ってはくれないのです。
今回の火災事故では、複数の部署にまたがり延べ14名の
入居者対応、外国人対応、内装工事、建物管理、
それぞれの担当者が結集してチームワークで対応しました。
物件購入時の仲介会社に紹介された管理会社に、
そのまま管理を任せるのではなく、
賃貸管理会社を選ぶ際には、
人員や組織体制などもしっかり確認することをお勧めします。
可能なら、過去にどういった事故に対応してきたのか、
尋ねてみると、万が一への対応力を見極められるかもしれません。
不動産投資にリスクはつきもの。
起こって欲しくなくても、起こる事故はあります。
だからこそ、パートナーとなる管理会社選びで、
しっかり備えて、大切な資産を守りましょう。
日本財託管理サービス 管理部一棟建物管理課
森 厚博(もりあつひろ)
◆ スタッフプロフィール ◆
千葉県四街道市出身の40歳。
管理部一棟建物管理課に所属し、
建物の資産価値の維持・向上を目指している。
わざわざレンタカーを借りてサービスエリアに行き
その土地の特産物を食べるのが何よりも楽しみ。