収益アップと資産価値向上のカギは共用部にこそあり!1棟物件の最新設備導入事例
2017/12/07
今年もあっという間に
年の瀬が近づいてきましたね。
この1年だけでも、
さまざまなニュースがありました。
賃貸経営に関わることで、
今年前半、話題になったのが、
ヤマト運輸の運賃値上げのニュースです。
『宅配クライシス』という言葉と共に、
再配達の問題がクローズアップされました。
賃貸物件では、受け取り側、配送側共に便利な
宅配ボックスへの注目度が一気に高まりつつあります。
全国賃貸住宅新聞が先日発表した
人気設備ランキングでも、
「周辺相場より家賃が高くても決まる」部門で、
昨年の8位から3位へと順位が急上昇しました。
社会的関心も高いことから、
当社でも、導入事例が増えてきています。
分譲型の最新マンションと比べれば、
やはり一棟アパートやマンションは設備的に
見劣りしてしまいます。
最新設備の設置によって、これに対抗する競争力を
底上げすることが可能になるのです。
ただ、オーナー様にとってみれば、
新規設備の導入は、少なくない額の出費に
なってしまうことは事実です。
ましてや宅配ボックス設置は、共用部の話ですから、
なかなか家賃に反映しづらいものです。
しかし、1棟アパート・マンションの場合、
オーナー様にとっての収益改善策は
収入を上げることだけではありません。
コストを引き下げることでも、
収益改善につながります。
そのカギは、宅配ボックスと同じく、
共用部にあります。
たとえば電子ブレーカーの導入や、
照明のLEDへの交換といった施策を通じて、
共用部にかかるコストを圧縮する方法があります。
そこで今回のコラムでは、
共用部の設備交換によって、
収益力の改善、さらに資産価値の向上につながった事例を
ご紹介したいと思います。
ご紹介する物件は川崎市内にある
総戸数30戸、築22年のRC造の
1棟マンションです。
昨年、管理会社の切り替えで、
当社が1棟丸ごと、賃貸管理と建物管理を
お預かりしました。
以前の管理会社はレスポンスが遅く、
提案の少なさも不満だったようです。
管理の移管にあたって、
さっそくヒアリングを行いました。
どうやら、共用部の設備については、
大きな交換などを実施したことがないようです。
調べてみると、5階建てということもあり、
エレベーターが設置されていました。
エレベーターがあるということは、
共用部の電力コストが大きいことを意味します。
そこで、まず電子ブレーカーとLED照明の導入を
ご提案しました。
電子ブレーカーは一般的なブレーカーと比べ、
より正確に電流値を計測できます。
そのため、規格で定められた許容範囲最大まで
電流を使用できたり、契約の形態を変えて、
契約容量を抑えることができます。
電力消費量によっても異なりますが、
基本料がグッと圧縮できるため、
年間で数十万円単位のコスト減につながるケースもあるのです。
また、共用部の照明をLEDに
切り替えることで、電力消費量そのものを抑えられます。
365日付いている共用部照明は、
その交換費用も含めれば、
年間単位で数万円~十数万円のコストがかかります。
加えて、蛍光灯はいずれ製造を終了する
見込みとなっています。
長い目で見れば、LEDへの変更は、
必然ともいえます。
この物件の場合、共用部に備え付けられている
47灯の照明を、蛍光灯からLEDへと交換しました。
LEDなら消費電力は抑えられ、
10年以上、交換も不要です。
シミュレーションしたところ、
電子ブレーカーとLEDの導入初期費用は
全部で約109万円でした。
一方でコスト削減効果は、月21,000円、
年間にして約25万円です。
初期投資額は4年5か月で回収できる計算です。
この試算を見せても、オーナー様は、
最初は懐疑的でした。
『本当にそんなうまくいくのですか?
うまくいくかどうか分からないものに、
あんまりお金を出したくないのだけど...』
そんなご要望も踏まえ、
7年間で所有権が移転する割賦契約での
設備導入をご提案しました。
初期費用なしで、毎月17,000円を、
7年間支払う形です。
コスト削減分を勘案すれば、月4,000円ほど
おつりがくる計算なので、
オーナー様も納得の上、導入となりました。
ひと月ほど経った頃、また物件へ訪れ、
お話を伺いました。
「その後、どうでしょうか?」
『本当にその通りになりました!良かったです!」
電気料金の明細書は、
ほとんどシミュレーション通りになっていたそうです。
その後もスピーディーな日常対応で、
オーナー様からの信頼を獲得していきました。
そして今年に入り、宅配ボックス設置の
ご提案を行いました。
ネット通販市場は、
10年前から3倍の規模に膨らんでいます。
ネット通販を利用する20代・30代の単身者は、
賃貸住宅の入居者と重なります。
宅配ボックスの有無はお部屋を絞り込む
有力な条件の一つになりつつあります。
ましてや築年数の浅い分譲マンションには、
ほとんどの物件で宅配ボックスが設置済みです。
入居者満足度と競争力を維持向上させる上でも、
1棟マンションやアパートへの導入は有効です。
今回は、工事費もリース代に含む形で、
月額約12,000円の8年リース契約で実施しました。
8年後には、新しい機械に置き換わって
継続するリース契約です。
コンピューター制御式のため、
トラブルがあってもコールセンターで受付後、
遠隔対応できるなど、設置後もオーナー様の手間がかかりません。
月々の消費電気代を含めても、電子ブレーカーとLEDで
削減した年間25万円の枠内に余裕を持って収まります。
ちなみに、これらのランニング費用は、
経費として計上することが可能です。
今回ご紹介した物件は、
現在、満室稼働中です。
とはいえ、宅配ボックスだけに限らず、
設備更新は常に考えていく必要があります。
今は満室だとしても、
10年、20年という期間の中で、
競争力は低下してしまう恐れがあります。
入居する単身者層のライフスタイルの
変化に合わせて、設備の見直しも怠ることはできません。
そのためにも共用部も含めた考え方で、
収益性を高め、原資を作っていくことが大切です。
もちろん全ての施策が、
全ての物件でできるわけではありません。
例えば、電子ブレーカーの導入は、
エレベーター付きなどある程度電力消費が大きい物件でないと、
効果を発揮しない施策です。
今回ご紹介した3つの取り組みだけでなく、
電力会社の切り替えや敷地余剰部分のコインパーキング化、
さらに保険の活用など、
1棟物件ならではの収益改善ポイントは多くあります。
具体的な事例もご紹介できますので、
収益力の低下でお悩みのオーナー様は
ぜひお気軽にご相談ください。
日本財託管理サービス 管理部一棟ソリューション課
笠原 良太(かさはらりょうた)
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都八王子市出身の38歳。
管理部一棟ソリューション課として、
建物の資産価値を維持し、収益力を改善するために
設備交換、外観のリノベーション、空きスペースの有効活用法などの
提案を行っている。
趣味は釣りで、休日には雨が降っても釣りに出かけるほど。
釣れた魚は自分で捌いて食べている。