相続で自宅から退去を迫られないための「遺言と家族信託」の活用法
2018/06/14
6月6日、相続分野における法律改正案として
『配属者居住権』が国会で審議入りしました。
配偶者居住権とは、
お亡くなりになった方の配偶者が
その後も自宅に住み続ける権利を保障する法案です。
これまでは、
おもな財産が自宅だけのような場合、
遺産分割トラブルで配偶者が自宅から退去を
迫られるようなケースもありました。
家の持ち主が亡くなったからといって、
配偶者がこれまで住み慣れてきた自宅を追われてしまうのは、
理不尽に思えます。
なぜこれまでこうしたことトラブルが発生し、
いま法律の改正が検討されているのでしょうか。
そこで、今回のコラムでは、
法律が改正される背景を確認しながら、
相続の現場で起こる自宅を巡ったトラブルを防ぐ手段について
紹介したいと思います。
妻と子どもがいるご家庭で夫が亡くなると、
妻と子どもに財産が相続されます。
全体の財産のうち、配偶者である妻が2分の1、
そして残りの2分の1を子どもたちで分け合うことになります。
妻と子どもが二人のケースで考えてみます。
このとき、4000万円の現金があった場合、
妻に2000万円、子供たちに1000万円ずつ
財産が相続されます。
おもな財産がご自宅の場合は、
自宅の所有権を妻と子たちで共有することになります。
気心の知れた親子ですから、
たとえ共有持ち分になったとしても、
多くの場合、このまま配偶者である妻は自宅に住み続けることになります。
ただ、問題は両親が他界しており、
子供がいないケースです。
この場合、妻の他に夫の兄弟たちが
法定相続人となります。
妻は財産の4分の3、
夫の兄弟たちは財産の4分の1を分け合います。
法律上、認められている相続分ですから、
もし、財産が自宅しかなかった場合、
兄弟が相続する4分の1の財産の捻出は
実家を売却するしかありません。
夫の兄弟たちと仲が良ければまだしも、
疎遠になっていれば、
その相続の権利を強硬に主張してくる可能性があります。
結果的に、思い出の詰まった自宅を手放し、
別の場所に居を構えなければならないことになります。
こうしたトラブルを防ぐために、
「配偶者居住権」がいま審議されているのです。
ただ、気をつけなければならないのが
配偶者居住権が施行されるまでの間です。
その間に上記のようなトラブルが発生した場合、
止める手立てはありません。
そこで効果を発揮するのが『遺言』です。
遺言で妻に自宅を残す旨を明確にしていれば、
たとえ夫の兄弟たちが4分の1を受け取る権利を主張しても、
その主張を排除することができ、
妻に自宅を残してあげることが可能です。
そして、あわせて利用を検討したい手法が
「家族信託」です。
遺言は確かに有効ですが、
生前においては、所有権は元の持ち主のままとなります。
万が一、ご主人が認知症になってしまうと、
自宅の売却はできなくなってしまいます。
たとえば、
ご夫婦ふたりで老人介護施設に入ろうとしても、
入居一時金や毎月の費用の捻出に、
自宅の売却資金をあてにしていた場合、
売却自体ができないので、入居は困難になります。
このとき、家族信託を活用して、
信頼のおける子どもや親戚に自宅の管理、売却まで任せていれば、
たとえ、認知症になったとしても財産をご両親の生活のために利用できます。
また、家族信託では遺言と同じように
財産の承継先も指定することが可能です。
そのため、夫が亡くなった後には、
妻に自宅を承継させるということもできるのです。
相続トラブルを防ぐために
法整備が進むことは、大変喜ばしいことです。
しかし、まだ審議にかけられた段階で、
いつ施行されるかはわかりません。
その間に、もしも自身や配偶者が体調を崩されてしまったり、
認知症になってしまうと、
その後の生活も安心できない事態に陥ることもあります。
トラブルを回避するためには、
事前の対策が不可欠です。
当社では認知症対策や財産承継に効果を発揮する
家族信託に関するご相談を承っております。
お子さまがいないケースでの財産承継や
ご家族の認知症が心配という方はぜひ一度ご相談ください。
相続の現場で起こった実例を踏まえながら、
どのように準備を進めればよいかをお伝えさせて頂きます。
日本財託 資産コンサルティング部 家族信託コーディネーター
横手 彰太(よこてしょうた)
◆ スタッフプロフィール ◆
鹿児島県阿久根市出身の45歳。
資産コンサルティング部アセットプランニング課で、
相続対策や法人設立、家族信託など、
お客様の資産を守り増やしていく提案を行っています。