子育てと介護の負担が同時に襲う!ダブルケアの実態と賢い備え方
2018/08/02
先月、ソニー生命がある調査結果を
発表しました。
大学生以下の子どもがいる人の
約3割が「ダブルケア」を経験している
というものです。
ダブルケアとは、子育てと親の介護という
2つのケアを両立している状態をいいます。
子育てと介護の両立は、
身体的にはもちろん、精神的、そして経済的にも
働き盛りの世代にとって大きな負担となります。
ダブルケアの状態になる人は、
今後ますます増えると予想され、
どのご家族にとっても他人事ではありません。
大切な家族のことですから、
なかなか避けられない負担でもあります。
しかし、いまから備えておくことで、
経済的な負担の軽減は可能です。
そこで今回のコラムでは、ダブルケアの実態と、
経済的負担への賢い備え方をご紹介します。
ダブルケア増加の背景には、
晩婚化と出産年齢の上昇があります。
第一子出産年齢は1975年には25.7歳でしたが、
2015年には30.7歳と5年遅くなりました。
当然、「初孫」ができた親の年齢も、
5歳分上がっています。
子どもがまだ小中学校に通うご家族でも、
親世代は70歳を超えているケースがあり、
介護が始まることは珍しくありません。
50代では男性の3割、女性の4割が、
ダブルケアを経験しています。
肉体的な負担だけでなく、
精神的な負担も大きいのがダブルケアです。
たとえば子育て世代は、ママ友がいても、
介護の相談まではできないこともあるからです。
一方で、ダブルケアが始まると
経済的な負担も避けられません。
調査によれば平均月額で、
子育て関連に約3万8000円、
介護・医療関連に約2万3000円、
計6万円あまりが生活費にプラスされます。
約8割の人は、親の介護費や医療費を
自身の財布から負担しています。
さらに、想定外の支出があったとの回答も半数にのぼります。
特に40代、50代にとっては、
教育費や介護費だけでなく、
自分自身の老後にも備えないといけない時期です。
経済的には、介護費、養育費、そして老後への備えの
トリプルパンチが襲う
といっても過言ではありません。
もし、自身の財布から介護費用を出せないとなれば、
両親の持っているお金を頼りにして、
備えるしかありません。
ところが、ここに認知症という
大きな問題が立ちはだかります。
認知症が重症化して判断能力がなくなると、
親の財産は事実上、凍結してしまいます。
たとえば、定期預金が解約できなかったり、
住む人がいなくなった実家を売ることができなかったりして、
老人ホームに入居するお金を工面することができないのです。
これを防ぐ方法が「家族信託」です。
家族間であらかじめ目的を定めた契約を結び、
財産を管理する権限を、親から子どもに託してもらいます。
現金を信託した場合、
専用の銀行口座を作って、
子どもの財産とは分別して管理します。
介護にかかわる費用は、この口座のお金から、
子どもの権限で、必要なときに出すことができるわけです。
家族信託の契約を当社でお手伝いした
直近の事例にも、こうしたご家族がいらっしゃいます。
ご相談いただいた40代女性のAさんは、
夫と娘と共に東京に住み、
ご両親は地方の実家暮らしです。
Aさんの父親は80歳を超え、
母親も70代で、認知症のリスクが気になる年齢です。
Aさんは父親の通院に付き添うため、
現在も1ヶ月に1度は実家に戻っています。
母が同居しているとはいえ、
近い将来、父親に介護が必要になれば、
一人っ子のAさんが何とかするしかありません。
しかし、まだ娘は11歳の小学生で、
これからまだまだ教育費もかかります。
ダブルケアのリスクが高い状態を考えて、
父親から自宅と現金、
母親からも現金を託される契約を結びました。
これで、いざという時は安心して
両親のお金を活用して在宅介護のサービスを充実させたり、
高齢者施設へ入居してもらうこともできます。
家族信託を考えるにあたり、気をつけるべきポイントは、
認知症で判断能力がなくなると、家族信託の手続きは
できなくなってしまうということです。
その前に手続きを進めて、
備える必要があるのです。
高齢になればなるほど、
認知症になるリスクは高まります。
ゴールが見える子育てとは違い、
介護には終わりがなかなか見えません。
負担に押しつぶされて、
親子の関係が悪くなってしまったという
ご家族もあります。
だからこそ、経済的負担だけでも
できる限り軽減できるよう、
備えておくことが大切です。
ご両親が70代以上ならば、
認知症対策の選択肢の一つとして、
家族信託は大変有効な手段です。
お盆で実家に帰省する方も多いと思いますので、
この機に、ご家族で将来のことを
話し合ってみてはいかがでしょうか。
日本財託 資産コンサルティング部アセットプランニング課
家族信託コーディネーター
横手 彰太(よこてしょうた)
◆ スタッフプロフィール ◆
鹿児島県阿久根市出身の45歳。
資産コンサルティング部アセットプランニング課で、
相続対策や法人設立、家族信託など、
お客様の資産を守り増やしていく提案を行っています。
認知症とお金の問題を解決する専門家。
この夏は長男と富士登山を予定しています。
家族信託の最前線(ときどき家族の最前線)コラムは
こちらから!
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