おれおれ詐欺、金融商品の押し売りから財産を守る!家族信託の活用法
2019/05/16
高齢者を巡る金融商品取引でトラブルが相次いでいます。
「保険料800万 実は4000万円 郵便局員不正営業に批判相次ぐ」
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/508861/
こうしたトラブルを受け、日本郵政では4月から
80歳以上の高齢者を対象として
保険の勧誘を自粛すると報道されています。
高齢者に対する通常の金融商品の販売でも
トラブルは続出しておりますが、おれおれ詐欺に代表される
特殊詐欺の被害も後を絶ちません。
高齢になれば体力だけでなく、
判断能力も衰えてきますので、
こうしたトラブルに巻き込まれやすいのです。
ご両親の財産を守るための手法のひとつに
家族信託があります。
家族信託では、ご両親の財産を守るだけでなく
万が一、認知症になったとしても
財産が実質的に凍結されることはありません。
そこで、今回のコラムでは、
『財産を守る観点』から家族信託の利用法やメリットについて
お伝えしていきます。
家族信託とは、財産を管理するための手法のひとつです。
財産の所有者が、契約で定めた目的のために、
現金や不動産などの管理・処分・運用権限を
信頼のおける家族に託す仕組みです。
親は所有する実家や収益不動産、預金の一部を、
信託契約によって子供に管理運用を任せることで、
たとえ認知症になって判断能力が衰えたとしても、
自分自身のためにお金を利用してもらうことができます。
たとえば、親が所有する現金2,000万円を信託財産として
子どもに管理を任せるケースで考えてみましょう。
預けられた預金は親が所有する口座ではなく、
一般的に、信託口(しんたくぐち)口座とよばれる専用口座で、
分別管理されます。
こうすることで、販売員の勧誘によって加入しようとしても、
そもそも預金は別で管理されているので、
お金を引き出すことはできません。
結果的に両親の財産を
過剰な金融商品の販売や特殊詐欺から
守ることができるのです。
ここでよく頂く質問が
『家族信託を利用すると、
親は自分の意思でお金を使えなくなってしまうのか』というものです。
結論からいえば、
自由にお金が使えなくなることはありません。
家族信託では、すべての財産の管理・運用をまかせるのではなく
委託する財産の範囲を契約によって定めることができます。
預金の一部や所有する不動産のうち、
実家だけを信託するということが可能です。
そのため、両親が自由に使えるお金は残しておくことで、
自由に買い物ができる環境を整えることができます。
さらに、信託契約自体の解約条件を定めておけば、
途中で財産の管理委託を取り辞めることも可能です。
同様の財産管理手法のひとつに、成年後見制度があります。
後見制度はいったん利用をはじめてしまうと、
途中で辞めることはできません。
さらに、財産を管理する後見人に家族が必ず任命されるとは限りません。
見ず知らずの弁護士が後見人となり財産を管理することも多くなります。
家族が両親のためにお金を使う際にも、その都度お伺いを立てる必要があるので、
後見制度は使い勝手が良いとはいえません。
ただし、家族信託は契約行為になるため、
判断能力がなければ、利用できません。
ひとたび認知症になり、
判断能力が失われてしまえば、おなじ財産管理の手法でも
成年後見制度しか利用できなくなります。
そのため、ご両親が元気なうちに、
財産を悪意をもった第三者から守るために、
信託契約を検討することが欠かせません。
特殊詐欺の多くは、高齢者の孤独につけこみ、
言葉巧みに誘導します。
親子間のコミュニケーションが疎遠になればなるほど
こうしたトラブルにも巻き込まれやすくなるのです。
大切な財産を子どもに任せようと決断してもらうには、
普段からの信頼関係の構築が欠かせません。
最近、両親と話されていないという方は
ぜひ機会を設けて電話や会いに行ってはいかがでしょうか。
財産を守る第一歩は、
親子間の密なコミュニケーションです。
日本財託 資産コンサルティング部アセットプランニング課
家族信託コンサルタント
横手 彰太(よこてしょうた)
◆ スタッフプロフィール ◆
鹿児島県阿久根市出身の45歳。
認知症とお金の問題を解決する専門家。
相続対策や法人設立、家族信託など、
お客様の資産を守り増やしていく提案を行っています。
母の日には、実家に必ず電話をします。私が話す時間は、
数十秒でそのあと2歳の次男に代わります。
2歳になる孫と話すのが何より母にとって喜びです。
私の役目は、孫と両親を会わせる時間の調整です。
孫に会うのが、一番の認知症対策だと思っています。