数百万円の損も?サブリース物件の隠された売却リスク
2020/08/06
当社では毎月およそ100戸近い物件を仕入れて、お客様にご紹介しています。
当社の厳しい基準に満たずに購入を見送った物件や、条件が折り合わず買えなかった物件もたくさんあります。
ここ数年の買えない理由で、増えているのが「サブリース」です。
サブリースについては先日のコラムでも、倒産リスクや入居者の情報が見えないといった落とし穴を取り上げました。
『サブリース説明の義務化!家賃減額だけではないサブリース契約の意外な盲点とは』
実は、物件の売却という面でもサブリース契約は注意する必要があります。
そこで、今回は見落とされがちなサブリース物件の売却リスクについてご紹介します。
サブリース契約とは、オーナーが所有する不動産を不動産会社が借り上げて、第三者に転貸する契約のことです。
空室時も家賃収入が保証されており、収益の安定性や安心感からサブリースを選択する方もいます。
ただ、運用中には隠れていた問題が、物件を売却するタイミングで顕在化することがあります。
その問題が、売却価格の下落です。
サブリースが付いていると、本来の相場より低い価格でしか売れない可能性が高まるのです。
収益物件の価格は、基本的には期待される収益から算出する収益還元価格を元にして決まります。
サブリース契約の場合、空室リスクを心配する必要がない分、オーナーが受け取る保証賃料は、相場家賃のおよそ80%~90%程度に抑えられています。
そのために、通常の管理代行契約で結んでいる物件に比べて、算出される売却価格も低くなるのです。
場合によっては数百万円単位で、価格が低く算出されてしまうこともあります。
それでは、売却時にサブリース契約を解除すればよいと思うでしょうが、実は簡単な話ではありません。
ここ数年、売却時にサブリース契約を解除しない不動産会社が増えています。
集金代行契約に比べて、高い手数料が取れ、空室リスクも低い都心物件のサブリース契約はいわば"金の卵"。
都心であれば将来的にも相場家賃と保証家賃が逆ザヤになる可能性は低く、空室時の補填を加味しても、不動産会社にとっては利ザヤが大きいため、手放したくないのです。
「売主にサブリースを解除してもらえないなら、買って自分がオーナーになってから、契約を切ればいいのでは?」
確かにその通りなのですが、今度は借地借家法が立ちはだかります。
通常、オーナーは入居者と賃貸借契約を解約しようとしても、正当な理由がない限りできません。
借地借家法では、貸主に比べ立場も弱く、経済的にも不利とされている入居者の権利が強く守られているのです。
サブリース契約を結ぶ不動産会社は、オーナーにとっては入居者です。
つまり、極めて例外的な状況を除けば、オーナー側から一方的にサブリースの契約更新を拒絶したり、中途解約することはできないのです。
売却を困難にする背景には、融資の問題もあります。
サブリース付きの物件には、融資が出にくいのです。
金融機関は融資審査の段階で、現在の入居者の属性を確認しますが、サブリース契約の場合、転貸先の入居者の情報は分かりません。
情報を開示しない会社も多く、チェックができない以上、金融機関としては融資を絞らざるをえません。
価格が相場より安くなり、しかも融資も付きにくいとなると、いざ売りたい時に売れなかったり、無理に売っても赤字が出てしまう状況に陥りやすくなります。
当社が携わった物件でも、先日10年近くかかってようやくサブリース解除できたという案件がありました。
そのくらいサブリースは、強固な契約です。
サブリース契約前の説明を義務付ける法案も6月に成立しましたが、契約条件を説明するだけで、今回のケースのような影響まで説明を求めるものではありません。
そもそも都心のワンルームであれば、サブリースによる家賃保証を付けなくても、長期にわたって安定した収入を得ることができます。
サブリースによる空室保証をつけなければ、安心できない場所であれば、投資をしない。
どうしてもサブリースを検討しなければならない場合には、その影響までしっかり把握してから、検討することをおすすめします。
日本財託 マーケティング部セールスプロモーション課
横尾 幸則(よこおゆきのり)
◆ スタッフプロフィール ◆
埼玉県大宮市出身の32歳。
マーケティング部で、セミナーやHPの運営、メールマガジンの執筆や広報活動を通じて東京・中古・ワンルームの魅力を多くのお客様に伝える。
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