「心の病」に寄り添い入居者の再スタートを応援する
2020/09/03
新型コロナウイルスの感染拡大以降、家賃に関するご相談を数多くいただきました。
相談の際には、住居確保給付金や社会福祉協議会による総合支援資金貸付などの制度をご案内しています。
また、ご相談はなにもコロナウイルスを理由としたものには限りません。
なかには、「心の病」を患い退職、そして滞納トラブルになるケースも年々目にするようになりました。
このような場合には、入居者様の状況を確認し、保証人と協議のうえ、新たな生活の再スタートをお手伝いすることもあります。
今回のコラムは、心の病を抱えた入居者様とそのご家族との対応について、事例を交えながらご紹介します。
今年の3月、女性の入居者Aさんの入金がストップしました。
Aさんのお住まいは港区のワンルームマンション。
10万円を超える家賃でしたが、Aさんのご年収はもちろん、勤務先から家賃補助も出ており、入居審査の際に問題は見当たりませんでした。
どうしたのかと思って連絡してみると、「支払いは難しいです」とたったひと言だけ、ショートメールが返ってきたのです。
その後、電話もメールにも応答がなく、訪問しても、お会いすることはできませんでした。
そのため、やむを得ず保証人である弟のBさんへ連絡することにしました。
「姉はうつ病なんですよね。」
詳細はお伺いできませんでしたが、重度のうつ状態に陥っている様子で、自室に引きこもってしまい、ご家族でもお会いできていないとのことです。
さらに、命の危険も出ているとのこと。
連絡が取れないからといって、このまま電話やメールを続けてしまうと、最悪の自体も招きかねません。
そこで、いったん当社から直接Aさんに連絡をすることは控えることにしました。
とはいえ、滞納問題について、継続して協議を行わなければなりません。
そこで、弟のBさんを通じて、今後の対応をAさんにお伝えすることにしました。
Aさんへの対応は、まず区役所において生活保護を受けられるよう手続きを行うことから始めました。
Bさんには区役所に同行してもらい、無事、生活保護を受けられるようにはなりましたが、現在のお住まいの家賃を全額賄うことはできません。
そのため、別のお部屋へと住み替える必要が出てきました。
ご本人とご家族の希望で、将来的に次の仕事を探すためにも、現在のお住いの場所のそばで部屋を探し始めたそうですが、生活保護の範囲で賄える物件は、なかなか見つからないとのことです。
しかも、コロナ禍で外出もはばかられる中、仕事の合間を縫って部屋を探されているBさんの姿を見て、少しでもお力になることができればと、お手伝いすることにしました。
当社の管理物件の中には、入居可能なお部屋が無かったため、不動産会社だけが閲覧できるウェブサイトで、入居可能な空室の物件を検索しました。
すると、条件に該当した部屋が30件ほど見つかったのです。
それぞれの部屋を管理している不動産会社へ入居が可能かどうか、ひと部屋ずつ確認していきます。
病気のことをお伝えすると難色を示す担当者が多いなか、10件ほど交渉し、ようやく1件入居可能なお部屋が見つかり、さっそく、Bさんにご連絡しました。
その後、Aさんと一緒に内見してもらい、無事契約を済ませることができました。
さらに数十万円にも膨れ上がってしまっていた滞納家賃はBさんが返済。
また残置物の撤去についても、ほかの親族の手を借りながら終えることができました。
当社でマンションをご購入いただいたオーナー様には滞納保証が付きますので、今回のような滞納トラブルが起きたとしてもご負担はありません。
ただ、いつまでも滞納トラブルを解決できずに長期化してしまうと、その後の退去トラブルや残置物など、ほかの問題も引き起こしかねません。
今回のコロナ禍では、心に病を抱えてしまう方も多いと報道されています。
そのため、トラブルの内容も複雑化し、マニュアル通りでは、対応しきれないこともあります。
こういった状況だからこそ、画一的な対応ではなく、入居者様おひとりおひとりの状況にあわせてしっかり向きあって対応してきたいと思います。
日本財託管理サービス 債権管理部
吉末 篤司(よしすえあつし)
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都足立区出身の48歳。
債権管理部に所属し、入居者が抱える問題に向き合い、滞納家賃の回収や、高齢の入居者様への定期訪問を行っています。
少し田舎の方に引っ越しをしたこともあり、以前から興味のあった家庭菜園を始めてみたいと思っています。