手付金の支払いがターニングポイント!不動産を購入する前に知っておきたい物件購入の流れ

2021/06/10

「いつでも白紙撤回できるから、と言われている」

地方で不動産投資を検討しているお客様のお話です。

お客様は"いつでも白紙にできるならいいか"と、
地方の一棟不動産の話を進めていたそうです。

しかし、詳しく話を聞いてみると、すでに不動産会社に対して
手付金を振り込み、捺印をした契約書もあるとのこと。

さらにこれから金融機関との金銭消費賃貸契約も控えている状況でした。

結論から申し上げると、この状況で無条件での白紙撤回は難しく、
解約するためには、少なくとも手付金の放棄が必要となってきます。

このように契約手続きに関する知識が不足していると、
いつの間にか手付放棄や違約金が発生してしまう状況まで進んでしまいかねません。

もちろん多くの不動産会社は契約手続きの流れについて、
説明をしてくれますが、自分自身でも手続きの全体像を理解しておけば、
トラブルに巻き込まれることもありません。

そこで今回のコラムでは、
改めて不動産投資の契約手続きの流れと注意点をご紹介したいと思います。

まずは、物件を紹介されてから、契約、そして引き渡しを受けるまでの流れを確認しましょう。

〈投資用不動産を購入するまでの流れ〉
① 金融機関への事前打診
買主(あなた)の個人情報をもとに、金融機関へ事前の審査を実施

②物件の買い付け申込
購入物件に対し、売主(不動産会社)との間で買い付けの申し込みを行う

③-1手付金の支払い
買主が売主に対し購入の意思を示すための最初に支払うお金。
金額は決まっていませんが、投資用のワンルームであれば10万円程度が目安です。

③-2売買契約の締結
売主から買主に対し重要事項の説明が行われ、
売買の意思を確認して、売主と買主の間で取り交わされる契約。
なお、売買契約時に手付金を入金することが一般的です。

④金融機関への本審査
金融機関が買主を審査し、融資実行の可否を決める。

⑤(本審査承認後)融資の本契約
買主と金融機関との間で、融資を実行するための『金銭消費貸借契約』を取り交わす。
これにより、引き渡しの翌月から買主はローンの返済を行う必要があります。

⑥引き渡し
諸経費や売買代金の残金の支払いを確認後、物件の引き渡しが実施されます。
この日より日割りの家賃収入が発生。
諸経費の精算ならびに登記手続きが完了次第、登記済権利証が買主の手元に届きます。

これらを経て、晴れて不動産オーナーとして
資産形成をスタートさせることができます。

とはいえ、不動産は大きな買い物であることから、
ご自身やご家族の状況を鑑みて、途中で考えが変わることもあるでしょう。

ただ、物件の購入をキャンセルする場合、
そのタイミングによっては、手付金が戻ってこなかったり、
解約自体が難しいことがあります。

この解約を行う手段は3つあります。

それは、手付金を支払う前に「無条件」で解約する方法と、
手付金を支払ったのち、「手付放棄」を行って解約する方法、
また、「クーリングオフ」を活用する方法です。

まず、手付金を支払う前に申し出た場合には、
「無条件」で契約を解除することができます。

さきほどの流れの説明で言えば、
「②買い付けの申し込み」をしただけであれば問題ありません。

ただし、いったん手付金を支払うと、それ以降に解約する場合には、
支払った手付金を放棄する必要があります。

投資用不動産の購入に対し不安を感じている部分があるのであれば、
手付金を支払う前に一度立ち止まり、
担当者ともう一度、懸念点について相談することをお勧めします。

では、引き渡しまでの間であれば、
いつでも手付金の放棄で解約ができるのでしょうか。

実は、ここに大きな注意点があります。

それは『相手方が契約の履行に着手』したかどうかの判断によって、
物件価格の一部や全額を請求されるなど、大きな違約金が発生するケースがあります。

例えば、あなたが金融機関との金銭消費貸借契約を終えたのち、
売主である不動産会社が対象物件の引き渡しに向けて、抵当権の抹消を金融機関に依頼したり、

司法書士に対して、登記の準備を依頼すると、「契約履行に向けた行動」とみなされ、
これ以降、買主であるあなたが契約を解約する際には、違約金が発生します。

ただし、取引の内容によっては個人で判断することは非常に難しいことから、
気になる方は不動産会社や法律の専門家にご相談することをお勧めします。


また、物件の引き渡し前や融資の実行前、
代金の一括支払いがされる前であれば「クーリングオフ」を利用することもできます。

不動産会社は、宅建業法上、クーリングオフの説明を行うことが義務付けられています。

買主はこの説明を受けてから8日以内であれば、
クーリングオフを適用することができますが、
その際は、契約時の「場所」がポイントとなります。

例えば、不動産会社の事務所で契約を行った場合には、クーリングオフは適用されません。

また、事務所以外の場所であっても、買主であるあなた自身がファミレスや勤務先、自宅などに
「来てほしい」と伝えて、その場所で契約した場合は適用外となります。

不動産会社の担当者から「自宅に伺う」と伝えた場合など、
売主である不動産会社側の都合でなければクーリングオフは利用できません。

いずれにしても、手付金を支払うまでの期間が無条件で解約するための
ターニングポイントになります。

それまでに、投資に対して不安に感じることやリスクなどを
担当者に率直に伝えてひとつひとつクリアにしていくことが重要です。

もし、不動産投資のリスクや購入後の経費などの説明に
納得ができないようであれば、あいまいにせずに立ち止まってじっくりと検討し直しましょう。

また、こうした説明をしっかり行ってくれない不動産会社であれば、
別の不動産会社に相談することも有効です。

今回ご紹介した契約の手続きのポイントをしっかりおさえて、
契約トラブルを回避するために、役立てて頂ければ幸いです。

日本財託 法務審査室 神山 直人(かみやまなおと)

◆ スタッフプロフィール ◆
埼玉県川口市出身の43歳。
法務審査室として、法改正や判例変更の情報を収集、日本財託グループが取り交わす各種契約文書に反映して、
法令に遵守した取引が行えるようにしています。

両親からコロナワクチン接種(1回目)の予約を依頼され代理で取得。
接種後に滅多に電話をしてこない両親から「感謝」の言葉をもらい、久々に親子の絆を感じた今日この頃。

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