退去まで約2年!高齢入居者様の転居に寄り添う賃貸管理会社の取り組みとは
2022/08/25
収益不動産からより長く安定的に家賃収入を得るためには、
日々のメンテナンスが重要になります。
また、定期的なメンテナンスに加えて、
屋上の防水塗装や外壁の修繕、給排水管の補修など、
十数年に一度は大規模修繕工事を実施することも欠かせません。
ただ、普段から管理をしっかりと行っていたとしても、
建物の寿命が来ることによって、将来建て替えが必要になることもあります。
その際、入居者には退去してもらう必要が出てきますが、
ご納得いただくことは簡単ではありません。
長年生活していれば、その部屋や土地に愛着が湧きますし、
人間関係もありますから、ご高齢になるほど、
生活環境を変えることに積極的にはなれないのも理解できます。
そのような時こそ、こちら側の事情を一方的にお伝えするのではなく
丁寧に状況をご説明し、入居者の想いをくみ取ったうえでご納得いただく必要があります。
今回のコラムでは、築50年を超えた老朽化マンションの耐震化工事に伴って発生した、
高齢入居者様との退去に向けた約2年にも及ぶ交渉をご紹介します。
「現在所有している物件の建て替えか、新しい物件の購入かで迷っています」
2020年6月、あるオーナー様からお問い合わせを頂きました。
所有している杉並区の地下1階、地上4階のマンションは、
最寄駅から徒歩5分以内の好立地の物件です。
さらに、地下1階から2階までは店舗やオフィスが入居し、
それだけで毎月100万円以上の収益がある状況。
ただ、建築されてからもう50年以上が経過し、外壁や共用部、室内設備の老朽化が目立ちます。
なにより、旧耐震基準の物件であったため、早期の対策が求められていました。
さっそく当社の一棟専門のスタッフが現地調査を実施。
調査の結果、多額の費用と年単位の期間を必要とする「建て替え」ではなく、
助成金も活用でき、期間も短縮できる「耐震補強工事」を提案致しました。
耐震補強工事は、いったん居室の壁を壊して、
新たな壁の内側に耐震補強材を入れることを必要とするため、現在の入居者の退去が必要になります。
ご相談時には、店舗とオフィス以外の入居者はお一人を残してすでに退去済。
工事プランについてオーナー様からご了承を頂いたのち、最後の入居者である
最上階に住んでいた80歳の女性Aさんと転居に関するお話をすることになりました。
「引っ越しって急に言われても困るわよ」
そのマンションに何十年も暮らしてきたAさんは、今の暮らしに大きな愛着を感じており、
さらに年齢を考えると、新しい場所に移り住むことにも不安を感じていらっしゃいました。
それから、何度もAさんの元を訪問して
老朽化した建物の状況を根気よく、丁寧に説明をし続けました。
さらに自宅近くで転居をサポートしてくれるケースワーカーも見つけてご紹介すると、
不安感も解消されたのか、転居にご納得頂くことができたのです。
ただ、ご了解はいただきましたが、いつまた転居に際して不安を抱かれるかわかりません。
そこで、「何か困ったらここに電話してください」と携帯電話の連絡先をお伝えしました。
『前はこんな入居者が住んでいたんだよ』
『この前は友達の家に電車で遊びに行ってきた』
ご連絡のなかには、単純に世間話がしたいときもありましたが、
Aさんのもとへ通ってお話を伺っていると、
毎回お土産を持たせてくれるようになり、徐々にAさんも心を開いていってくれたのです。
そんな状況に安心して迎えた退去期日の2022年4月、
『期間を延長してほしい』とAさんから連絡があったのです。
すぐにAさんのところへ向かうと、引っ越しの準備はおろか、転居先も決まっていない状況でした。
何十年も住んでいたこの地を離れることを考えると、
どうしても準備が進まなかったというのです。
ケースワーカーに連絡してみると、「準備は進んでいると聞いていた」と話が食い違ってしまいました。
そこでオーナー様に相談し、1週間程度期間を延長して頂くことにして、
ケースワーカーとともに転居先を探すことにしました。
引越しの手配と費用は自治体が請け負ってくれることを確認し、
ようやくAさんも転居を決意し、今年の5月に新居へ移られたのです。
『いろいろありがとう。今度お礼をさせてね』
ゴールデンウィーク明けにAさんから無事に新居に引っ越されたとご連絡頂きました。
Aさんの転居も終わり、ようやく工事に向けた本格的な準備が開始。
9月からいよいよ耐震補強工事が着工する予定です。
誰でも長年住み続けた土地や建物を離れる決断をするには勇気がいります。
特にAさんのように高齢だと、新しい環境へ馴染めるかどうか心配になり、
なおさらそこから離れにくくなるものです。
冒頭でもお伝えしたように、こちらの事情ばかりお伝えしても理解を得ることは難しく、
よけいに問題を大きくしてしまい、オーナー様にもご迷惑をおかけしてしまうことになります。
だからこそ、今回のケースのように、入居者様の事情をお聞きすることからはじめて、
信頼関係を構築することができれば、問題解決も円滑に進みます。
入居者様の生活にもしっかりと目を向け、
暮らしをサポートしていくことで、
安定した家賃収入をオーナー様にお届けしていきたいと考えています。
日本財託管理サービス 管理受託部 伊藤 駿(いとう しゅん)
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都練馬区出身の32歳。
現在は管理受託部に所属し、オーナー様が抱える空室や滞納など、賃貸管理のお悩みについて相談窓口を行っております。
最近結婚5周年で小浜島へ家族3人で旅行に出かけ、綺麗な海とおいしい郷土料理を食べて、心身ともにリフレッシュができました。