色あせない『缶』のタイムカプセル
2023/02/09
旅行先でのN・Tさん(左)と、空き缶で作った『1-A』の文字(右)
進学した高校で最初の担任となったのは
音楽が専門の初老の男性S先生でした。
忙しいなかでも、温厚で生徒想いの先生は
クラスメイトが多少のヤンチャを働いても、愛のある指導をされていました。
ある時、当時流行していた紅茶の缶ジュースの空き缶が
教室の壁際に散乱していることがありました。
缶のデザインがかっこよく、
なんとなく捨てられずに放置していたのです。
「飲んだ奴は片づけておけよ」
やんわりと注意する先生でしたが、
美術系のクラスメイトがその缶を色ごとに重ね、『1-A』という大きな文字を作りました。
『1-A』とは、1年A組だった私たちクラスのこと。
見事な出来栄えにクラスが沸き立ちましたが、
さすがに怒られると思っていました。
ところがA先生は壁に並べられた缶を見て、
「よし、お前らこの缶の中に、3年生になった自分に向けて手紙を書いて入れろ」
そう言って、一人ひとりに手紙を書かせ、
『タイムカプセル』としてそのまま残されることになったのです。
1年生の私たちにとって、
3年生の自分達は途方もなく先の未来のことのように感じられましたが、
S先生とこのメンバーで缶を開ける日が待ち遠しかったことを覚えています。
しかし、S先生との別れは突然訪れたのです。
2年生に進学する際に、S先生が地方の大学教授に着任することが発表されました。
先生はある楽器で著名な方で、音大の教授としての大抜擢。
もちろん喜ばしいことではありましたが、
それよりも先生と離れてしまう悲しみや寂しさがまさり、
私も涙ぐみながら先生と別れを惜しみました。
それから月日が過ぎ、楽しかった高校生活も終わりを迎えます。
卒業式は、朝から友人たちと目に涙をためながら、
充実した日を思い返していました。
式が始まる直前になり、そわそわと準備をしていると、
見たことのある姿が目に入りました。
なんとS先生が私たちの卒業式に参加するため、はるばる上京してきてくれたのです。
当時のクラスメイトで輪を作り、涙を流しながら再会を喜びました。
「よし、缶を開けて手紙を出すぞ!」
S先生は私たちとの約束を守り、一緒に『缶のタイムカプセル』を開けたのです。
残念ながら、十数年前にS先生は他界されてしまいましたが、
S先生とクラスメイト達と、涙を流しながら騒いだ当時の記憶は
今でも色あせない出来事です。
S先生の杓子定規ではない学生の気持ちに寄り添った指導やコミュニケーションのスタイルは
今の私にも強く影響を受けています。
現在は、私は入居者様からの家賃の入金をチェックする業務を担当しています。
口座の変更や振込口座のご案内など、お問い合わせをいただく際には、
入居者様に安心の生活をお過ごしいただけるよう、
ほかにお困りごとがないか伺うようにしています。
話が盛り上がりすぎて、長時間の通話となってしまうこともありますが、
入居者様に「更新したい」と思ってもらえるような対応を心掛けています。
生徒想いのS先生のように、人とのつながりを大切できるよう、
心のこもった対応をしていきたいと思います。
日本財託管理サービス 家賃管理部 N・T
◆ スタッフプロフィール ◆
東京都練馬区出身。
家賃管理部に所属し、入居者様からの家賃の入金チェックとお困りごとの対応を行っています。
コロナが少し落ち着いてきたこともあり、バレエがベースとなっているエクササイズ『バレトン』のレッスンに毎週通っています。