先生の不器用な優しさ
2023/08/10
海辺で休日を満喫するI・Iさん
私は普段から「元気よくあいさつする」「礼儀をしっかりと守る」ということは
欠かさないようにしています。
こうしたことが「当たり前」のようにできるようになった理由は、
中学時代に経験した卓球部での日々があったからです。
私が所属していた学校は地域で最も「厳しい」卓球部と言われていました。
入部した当時、先輩たちのあいさつがまるで高校球児のように
腹の底から声を出しており、『卓球部なのにこんなあいさつをするんだ』と
衝撃を受けたのを覚えています。
その厳しい規律を課していたのは、顧問のA先生です。
A先生は当時40歳前後。
がっしりとした体格に角刈りという、見た目からして「鬼コーチ」といった風貌でした。
その予想通り、A先生の指導は非常に厳しいものでした。
あいさつの声が小さいと、スクワット100回、
ランニング練習で自己ベストを更新しないと、スクワット100回...。
極めつけは、練習中に卓球台へラケットをほんの少し、投げるように置いたとき。
「何してるんだ!ちょっとこい!」
そう呼び出しを受け「道具を大事にしろ!」とこれでもかというほど怒られ、
体育館裏でスクワット1000回を命じられました。
そんな日々だったため、A先生のことは正直苦手でした。
その認識が少し変化したのは、1年生の秋ごろに初めて
地区大会に出場したときのことです。
周りは小学生のころから卓球をしていた選手も多くおり、
中学から本格的に卓球を始めた私は勝ち進むのは難しいだろう、と感じていました。
しかし、A先生の厳しい指導の賜物か、学年別の個人戦で準優勝をしたのです。
勝ち進んだことももちろん嬉しかったのですが、驚いたことがもう一つ。
試合後、A先生が「よくやったな」と手を差し出し握手をしてくれたこと、
加えて、応援にきていた両親や祖父母に会ったとき、
こっそりと私の活躍ぶりを褒めてくれていたことです。
普段は選手を褒めることを全くしないA先生の行動に驚くと同時に
厳しさはその人を思ってのことかもしれないと思うようになりました。
その後、社会人となった時も、A先生の「不器用な優しさ」を実感した出来事がありました。
建物の内装を請け負う会社に入社し1年目のときのことです。
施工管理の仕事をしていたため、下請けの職人さんに指示を出していましたが、
気難しい人が多く、同僚の多くは音を上げていました。
私も例に漏れず、強面で気難しい職人さんに戦々恐々としていましたが、
不思議と仕事は上手くやれていました。
その理由がはっきりしたのはある職人さんから言われたある一言。
「君はあいさつが気持ちよかったから頑張ろうと思ったんだよね」。
ここにきても、中学時代で身に染みていた「礼儀」が役に立っていたのです。
今、私が社会人としてやれているのも、A先生のおかげだと強く感じています。
先日、知り合いからA先生の近況を聞きました。
どうやら今でも地元の教育委員会でその辣腕ぶりを発揮しているそうです。
近いうちにA先生に会いに行き、
当時はぼんやりとしか思っていなかった感謝の気持ちをきちんと言葉にして伝えたいと思います。
日本財託管理サービス 管理部 業務課 I・I
◆ スタッフプロフィール ◆
神奈川県茅ケ崎市出身の28歳。
管理部業務課に所属し、主にお部屋の退去精算や内装工事の管理を行っています。
1年前に結婚したこともあり、地元に家を買いたいと思い、調べていますが価格が高い...。
頑張って貯金しようと思います。