お腹に残った命の勲章
2023/09/21
旅行先で家族と記念撮影をするS・Kさん(写真左から2番目)
私のお腹には大きな傷跡があります。
通常であれば痛々しく思うところですが、
私にとっては「命の勲章」とも呼べる大切な証です。
この傷は昨年、娘を出産した時にできました。
妊娠が分かってから出産直前までは順調そのものでした。
娘はお腹の中ですくすくと育ってくれており、
出産のために入院してからも、何一つ問題がない状態です。
加えて、計画無痛分娩での出産を予定していたこともあり、
麻酔のおかげで痛みは全くなかったため、食事をしたり夫と電話で話したりして
余裕のある過ごし方をしていました。
ただ、お腹の中の娘は予定日の丸一日が経ってもなかなか産まれません。
(のんびり屋さんな娘だなぁ。)
当時は気楽に構えていたのを覚えています。
しかし、二日目の午後を過ぎた頃、助産師、医師たちがバタバタと忙しなく動き始めました。
「お腹の中の赤ちゃんの心拍が下がり始めている。お腹を切ってすぐに赤ちゃんを出しましょう」。
医師から突然、帝王切開の宣告をされたのです。
突然のことに動揺したとともに、恐怖で体の震えが止まりませんでした。
すぐに母と夫に電話で報告。
母は「どうして自分の娘がお腹を切らなければならないの...!」とパニック状態で、
夫もビデオ通話越しに泣きそうな表情で心配してくれます。
私自身、混乱しっぱなしでしたが、家族の声を支えにそのまま手術室へ。
(どうか娘だけは無事に生まれてきてください...!)
身体中に管が繋がれ、下半身麻酔で意識が朦朧としながらも、ひたすら娘のことだけを祈り続けました。
その願いが天に通じたのか、しばらくすると「おぎゃあ」と大きな産声が室内に響き渡りました。
(無事に生まれたんだ、あぁ良かった...)。
まどろみの中でも、安堵の気持ちが胸中に広がります。
術後は麻酔の後遺症や傷の痛みに苦しみ、娘と会えたのは産後12時間後でした。
私の腕の中で眠るちいさな小さな娘。ただ、その存在は何よりも大きく感じます。
「やっと会えたね。この世界に生まれてきてくれたありがとう」。
苦労して会えた新しい命はとても愛おしく、自然と涙が溢れました。
娘が産まれてからしばらくは、慣れない育児で寝不足の日々が続いたこともあり、
ふと鏡に映る自分のお腹の傷を見て痛々しく思い、正直落ち込むこともありました。
しかし、それも一時的なこと。娘は小さな体で少しずつ成長し、
私の姿が見えなくなると泣いてしまう姿をみて、愛おしさが毎日、毎時間ごとに増していきます。
娘のためになら命を懸けられる、私の全てといっても過言ではない娘を育てていくうちに、
お腹に残った大きな傷はいつしか、母親になった証だと誇らしく思うようになったのです。
この「命の勲章」に恥じないよう、世界一可愛い娘のため、世界一の母親になれるよう、
これからも頑張っていきたいと思います。
日本財託管理サービス 管理受託部
S・K
◆ スタッフプロフィール ◆
石川県小松市出身。
管理受託部に所属し、主にオーナー様が所有している物件の管理解約の手続きなど、事務作業を担当しています。
最近、私の母と娘も連れて家族で沖縄旅行にいきました。娘は水族館で魚を見て大はしゃぎ。
幸せを噛みしめました