高台で記念撮影をするS・Fさん

表面的な事実だけでなく、背景にある想いまでくみ取ること。
私が仕事をする上で大切にしている価値観です。

こうした考えになることができたのも、前々職での経験があったからです。

私は大学を卒業後、新卒で地方銀行に入行しました。

銀行員はコンプライアンスや倫理観、正確性などが求められる職業です。
そんな厳しい環境で2年半、個人・法人のお客様に対して提案活動を行っていました。

価値観が変わる出来事があったのは、入社2年目に営業担当として配属されてすぐのことです。

まだ営業の仕事に慣れていない私は、早くお客様のためになる提案ができるよう、
全力で業務に取り組んでいました。

しかし、その余裕のなさが出たのでしょう、担当していたお客様に
お持ちする大切な書類に不備があり、ご迷惑をかけてしまったのです。

幸いなことに、手遅れになる前にミスに気づき、急いでお客様のもとに赴き
謝罪と追加のご対応をしていただき大きなトラブルにはなりませんでした。

ただ、営業担当として「信頼が命」の銀行の看板を背負っているにも関わらず、
お客様に不信感を抱かせてしまったのは事実。

そのことに非常に責任感を感じていました。

「こんな仕事をしていたらだめだよな」「上司からすごく怒られるんだろうな...」

お客様のもとから勤務する支店へと帰る道すがら、
自責の念と叱責される恐怖で足取りが重くなっていたのを覚えています。

「課長、少々ご報告が...」

支店に到着してすぐ、今日あった出来事を恐る恐る、
上司である営業課長のAさんに全て話しました。

「ミスをしてしまい本当にすみませんでした」

そう話を締めくくり怒りの言葉に身構えていると、Aさんは開口一番

「おう、仕事、頑張っているね！」

そう労いの言葉をかけてくれたのです。

予想していた反応とのギャップに戸惑い、言葉を失っていると、Aさんは続けて

「ミスをするってことはちゃんと仕事をしているってことでしょ。今回のミスなんて気にするな」
「万が一、クレームになっても私が責任を取るからどんどん営業活動して大丈夫だよ」
と言ってくれました。

Aさんは私が新人として必死になって仕事をしていること、
余裕のなさからミスが生まれたことを斟酌し、言葉を選んでくれたのでしょう。
事実、この言葉で気持ちが軽くなったのを覚えています。

その後は、不注意や繰り返しのミスには注意し、それ以外については
「経験や成長に繋がる失敗」だと前向きにとらえ、仕事にまい進することができました。

Aさんとのやり取りから10年。

現在、私はオーナー様の物件の収益改善提案を行い、管理を受託する営業を行っております。
一連の業務のフロントという立場上、バックオフィスとの調整も求められる仕事です。

その際には一つ一つのやり取りに対し「なぜそう考えているのか」を考え、
背景をくみ取ることで円滑に業務を遂行できるように意識しています。

これからも、周囲の人に対してAさんのような接し方をして、
まわりにより良い影響を与えられる存在になっていきたいと思います。

日本財託管理サービス　管理受託部　S・F

◆　スタッフプロフィール　◆
栃木県益子町出身の33歳。
管理受託部に所属し、物件オーナー様に管理委託や収益改善のご提案を行っています。
最近、実家近くのお寿司屋さんを訪れた際、大将が握るカンパチのおいしさに感動。
勝手知ったる地元でもまだまだ新たな発見があるんだ、と気づかされました。