オーナー様の心に満開の花を
2023/11/16
あんずの木(左)と家族と休日を過ごすM・Yさん(右)
当社は東京の中古ワンルームの販売と賃貸管理のほかにも、
ご自宅の売買といった実需用の物件の仲介業務を行っております。
先日も、30年以上住まわれたご自宅の売却をお手伝いさせていただき、
改めて不動産取引への向き合い方を考えるきっかけとなりました。
昨年2月末、
買主である建設会社の担当者から一本の電話が入りました。
聞くと、売主のAさんが現場に来られて「木を切らないでほしい」とお願いされているとの事です。
慌ててAさんへご連絡すると、話の全容が見えてきました。
Aさんが長年住んでいたご自宅の庭には大きな木が数本植えられており、
その一つが大きな「あんずの木」でした。
あんずの木は毎年3月になると、桜に似た薄ピンクの可愛らしい花が咲きます。
Aさんのご自宅でも、家族で眺めては春の訪れを感じたり、実った果実をジャムにしたりして、
毎年の楽しみとなっていたそうです。
物件の引渡しを終えた後もその木のことが心残りで、いざ工事が始まると、いてもたってもいられず
声をかけてしまったとのことでした。
「今更どうにもなりませんよね。失礼しました」。
そう力なく語るAさん。木は翌日には伐採されてしまいます。
(何か、自分にできることはないだろうか。)
居ても立ってもいられず、現場に足を運びました。
すると、今にもつぼみが開きそうな状態だったのです。
(何とか最後に、花が咲いたところをオーナー様に見せてあげたい。)
そう思い、買主である建設会社にご承諾をいただいた上で、
早速、現場の解体担当者に相談することに。
最初は良い顔をしなかった担当者でしたが、
無理を承知でお願いをしたところ、あと3日だけであれば、
木の伐採を後工程にずらせるよう、調整をしていただくことができたのです。
ほっとしたのもつかの間、ここ数週間は花が咲くには若干気温が低い日が続いていました。
(この3日間で、どうにか咲いてほしい。)
不安になりながらも、祈ることしかできませんでした。
すると、願いが通じたのか、伐採期間の延長の承諾をいただいた日から、
例年より気温の高い温かい日が続いたのです。
少しの期待を胸に3日後の最終日、現地へ向かいます。
そこには、満開の花に彩られたあんずの木の姿がありました。
まるで長年連れ添ったAさんに「頑張って咲いたよ」と最後の別れを伝えるかのように、
見事に咲き誇っている様子をみて、胸がいっぱいになったのを覚えています。
この日はAさんも駆けつけ「悲しくてさみしいけれど、最後に美しい花を見られて本当に良かった」と
想いを分かち合うことができました。
その後、チェーンソーで幹に切り込みが入り、綺麗な花びらを散らしながら倒れたあんずの木。
職人さんにご承諾をいただき、現場の職人たちに混ざって、
花が咲いている枝を切りそろえ、Aさんにお渡ししました。
ご自宅で共に年月を重ね、思い出を作ってきたあんずの木はもうありません。
しかしAさんの心にはきっと、この日見せた満開の花が残り続けることでしょう。
不動産の取引には、当事者のさまざまな想いが詰まっています。
ただ業務として売買をこなすのではなく、そこに関わる方々の想いに寄り添った
仕事ができるよう、これからも努めていきたいと思います。
日本財託 流通事業部 M・Y
◆ スタッフプロフィール ◆
神奈川県相模原市出身。
流通事業部に所属し、オーナー様ご所有不動産の買取の他、マンションやアパート、
土地や戸建てなど多岐にわたる売買仲介業務を担当しています。
昨年は13キロのダイエットに成功。人生が変わったと歓喜していたものの、
6キロリバウンドしてしまい、どのようにしてまた体形を戻していくかが最近の悩み。