"自分から変化する"ことを意識する
2022/06/16
友人と旅行を楽しむK・Mさん
大学2年のころ、福祉学部に籍を置いていた私は
翌年に控えた児童養護施設での実習に向けて、地方にあるいくつかの施設を見学しました。
施設の形態はさまざまで、家事ひとつをとっても
職員が行う場所もあれば、入居している子どもたちが分担して行っている施設がありました。
そのなかで、興味をひかれたのが、職員や先生が住み込みで働いている施設です。
ひとつ屋根の下で、職員と小学生から高校2年生までの6人ほどの
子どもたちが送る共同生活のスタイルが、"施設"という雰囲気を感じさせません。
実習の希望が通り、大学3年生の6月から
約1か月の間、住み込みで研修をさせていただくことになりました。
ほかの実習先では、日勤と夜勤に分かれ、任された時間で実習を行いますが、
住み込みでの実習ということで、休みの日以外は基本的に子どもたちと一緒に生活をします。
ただ、子どもたちは簡単には受け入れてくれませんでした。
ある小学生の男の子からは暴言を吐かれることは日常茶飯事。
スリッパを隠されることもありました。
逆に高校2年生の女の子は私と関わろうとはせず、一定の距離を保ったまま。
さまざまな事情を抱えて集まっている子どもたちの中には、
大人に裏切られた過去を持っている子もたくさんいます。
また、何度も入れ替わる実習生に対してストレスを感じていて、簡単には信用されません。
もともと嫌なことがあってもため込みがちな私は、
子どもたちに注意をすることできず、笑ってごまかす日々が続きました。
「相手を変えようとするんじゃなく、自分から変わるんだよ」
子どもたちとの関係性に悩んでいると、施設長が声をかけてくれました。
その言葉によって、ただなんとなく一緒にいる今のままでは
子ども達との関係性は何も変わらず、表面上の関わりで終わってしまうことに気づかされました。
職員や先生たちは、子どもたちが喧嘩をしてもすぐには叱りません。
その子たちが落ち着いてきたころに声をかけ、事情を聴き対応します。
また食事に関しても、子どもごとに分量や内容を変えて準備をします。
本来であれば、好き嫌いはいけませんが、
"あなたの好き嫌いを把握している"という事実が子どもたちの信頼にもつながります。
1人ひとり個性があり関わり方は千差万別ですが、私も子ども達の行動や発言の裏にある意味を考え、
そのうえで私自身の気持ちも伝えるように意識しました。
そのために、まずはしっかりとコミュニケーションをとることから始めました。
高校生の女の子には、毎日少しずつ話しかけるようにしました。
最初はなかなか話してくれませんでしたが、だんだん挨拶が返ってくるようになり、
会話の量が増えてくると、好きなアイドルの話で盛り上がるようになれたのです。
小学生の男の子に暴言を吐かれた際には、笑って誤魔化すことをやめ、
私自身の気持ちをしっかりと伝えるようにしました。
注意の仕方も、一方的ではなく問いかけることを意識します。
すると私が家事を優先していると「嘘つき」とすぐに怒ってしまっていたその子が、
「早く一緒に遊びたいから手伝うよ」と家事を手伝ってくれるようになったのです。
小さな出来事で関係性が振り出しに戻ってしまうこともしばしばありましたが、
それでもめげずに、根気よく会話を続けることで、素直に気持ちを表現してくれることが増えました。
実習最終日には、御礼とともに手紙を書いてくれたのです。
この実習で得た経験はその後の考え方に大きな影響を与えてくれました。
何かうまくいかないことがあっても、相手や環境のせいにするのではなく、
まずは自分が変わろうという意識をもって柔軟に行動できています。
この考え方をこれからも継続して、
このさき出会う方々とも、良好な人間関係を築いていきたいと思います。
日本財託管理サービス 経理部 K・M
◆ スタッフプロフィール ◆
千葉県出身。
経理部に所属し、主に入金確認や会計情報の分析等を行っています。
趣味は大人になってから始めたバイオリンです。週1回レッスンに通い、楽しみながら練習しています