「副業節税」に待った! 国税庁の新方針から考えるサラリーマンの節税と不動産投資の目的
2022/09/01
※こちらのコラム記事は2022年9月1日時点の情報に基づいており、最新の状況と異なる場合がございます。所得税に関する最新情報は国税庁のページをご参照ください。
いま副業が別の意味で話題になっています。
発端は、8月1日に国税庁が公表した「所得税基本通達」の改正案です。
これまでは、十分な収入が上がらず、
副業に伴う経費を計上して「赤字」が発生していれば、
赤字分を給与所得から差し引くことができました。
これによって、すでに源泉徴収されていた
所得税の還付が受けられていたのです。
通達では、「副業」と認める収入規模を大きくすることで、
給与所得との損益通算を認めない方針です。
こうした副業だけでなく、
不動産投資でも「節税」をキーワードにした
投資手法の紹介は後を絶ちません。
『不動産投資で税金が下がる』
『サラリーマンが可能な税金対策』
『国からお金を取り戻せる』
たしかに聞こえはいいですが、
その裏に潜む根本的な問題点を知らずに始めてしまうと、
長期的には大きく損をすることになりかねません。
今回は、国税庁の基本通達案による不動産オーナーへの影響を踏まえつつ、
所得税の仕組みをおさらいしながら、「サラリーマンの節税」を
目的とした不動産投資のあり方について考えていきます。
まずは今回話題にのぼっている
国税庁の「所得税基本通達」の改正案について確認していきましょう。
改正案は、来年3月の確定申告から、
年間300万円以下の副業などの収入について、
原則として「雑所得」として扱うというものです。
実は、副業で得た収入が確定申告における
事業所得と雑所得のどちらに該当するかは、
これまで明確な基準がありませんでした。
事業所得であれば、収入から経費を差し引いて赤字が発生した場合、
その分を給与所得から差し引くことができます。
これを「損益通算」といいます。
このとき、すでに給与所得の税金は源泉徴収されているので、
支払い済みの税金が還付金として手元に戻ってくるのです。
副業が脚光を浴びるようになるにつれ、
収入をあげることを目的にするのではなく、
いかに経費を計上して赤字を出し、税金を取り戻すかということを目的に
副業をはじめる人が散見されるようになりました。
こうした行為が国税庁に問題視され、
ルールを変える動きになっているのです。
雑所得は給与所得からの損益通算はできないので、
これまでのようにはいきません。
副業の趣旨は、あくまでも給与収入とは別の収入源を作ることであって、
節税のためではないのです。
この点、不動産投資でも同じことが言えます。
不動産投資における家賃収入は「不動産所得」に該当し、
事業所得と同じように、収入から経費を差し引いて赤字になれば、
その分を給与所得から差し引くことが可能です。
「不動産投資が節税になる」
「税金を取り戻せる」
不動産投資を検討されているかたであれば、
こうした謳い文句を一度は目にしたことがあるかもしれません。
ただ、こうした所得税の節税を目的にした
不動産投資は誤りです。
不動産投資の目的はあくまでも長期的、安定的に家賃収入を得ることにあります。
不動産投資の場合、特に「うまい話」に聞こえやすいのは、
手元から現金の支出を伴わない「減価償却」という
帳簿上の経費を計上できる点です。
減価償却とは不動産の建物部分の取得価格を、
購入時に一括して費用として計上するのではなく、
将来にわたって利用可能な年月にわけて
毎年費用として計上することをいいます。
たしかに、不動産投資を始めてからの数年は、
この減価償却のやり方によっては、
赤字を出すことができるかもしれません。
ただ、それも一時的な話です。
また、節税効果が切れて、譲渡所得税の税率も下がる
購入5年後以降に売却することで、
効果を最大化するという手法を目にすることもあります。
しかし、5年後にその不動産の価格が実際どうなっているかは、
その時になってみないと分かりません。
短期的な節税効果だけを目的にして
不動産投資を始めると、本来長期で所有していれば得られるはずの
大きな収益を取り逃すことになってしまいかねません。
また、節税を目的にしてしまうと、
安定的に収益を得られるかどうかよりも、
いかに経費を計上しやすいのか、減価償却を出せるのかといった視点で
不動産を選ぶことになります。
仮に、それで所得税の節税効果が持続したとしても、
それは赤字状態の継続であって、
不動産単独で見ると事業が成立していない状態を意味します。
繰り返しになりますが、
不動産投資の目的は長期に渡って安定的に
家賃収入を得ることにあります。
節税ではなく、将来のための収入源を作ることを目的にして、
堅実に資産形成を行うことをお勧めいたします。
日本財託 マーケティング部セールスプロモーション課
横尾 幸則(よこおゆきのり)
◆ スタッフプロフィール ◆
埼玉県大宮市出身の34歳。
マーケティング部で、セミナーやHPの運営、メールマガジンの執筆や広報活動を通じて東京・中古・ワンルームの魅力を多くのお客様に伝える。
ボルダリングに挑戦し始めて丸1年、
運動習慣は以前より付いたかなと感じますが、体重は一向に減りません。